「国産ガス」を使えるガス会社は出てくるのか?【都市ガス自由化】

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現在でも国産のシェアは7.4%


 意外に思うかもしれませんが、国内で消費される都市ガスの内、国産のガスを原料とする割合は7.4%(2010年度)もあります。となると、「国産ガス」を選べるプランも実現不可能では無い気がしますよね。


国産ガスを供給しているガス会社は既にある

国産ガスを供給している都市ガス会社

 東京西部でガス事業を展開する青梅ガスは、2010年から国産天然ガス73%:LNG(輸入)27%という比率で原料の調達を行っています。また、栃木県の足利ガスや山梨県の東京ガス山梨なども「国産と外国産を混合」してガス供給を行っていると表明していますし、群馬県の太田都市ガスも「国産天然ガスを供給している」としています。
 つまり、地域によってはこれまでも国産天然ガスを使っていた、というわけです。


国内のガス田

国内ても天然ガスが採れる

 国内では北海道、秋田、山形、新潟、長野、千葉、宮崎県などで天然ガスが産出されています。その内、生産量では新潟県が68%、千葉県が13%(2011年)のシェアを持っています。千葉県の茂原などでは、自宅の庭でガスを採掘して自家用で使っているところもあるようです(参考記事


 新潟や千葉で産出された天然ガスは、パイプラインを通って主に関東甲信越で消費されています。上で挙げた国産ガスを使っている都市ガス会社が関東に集中しているのはそのためです。


都市ガス自由化で「国産ガス」プランは拡がるのか


 では、2017年4月の都市ガス自由化で「国産ガス」を売り物にしたプランやガス会社は登場するのでしょうか。


価格以外の差別ポイントとしては有用?


 都市ガスは法律で規格が定められているため、商品そのもので差別化を図ることが不可能です。そうすると価格競争をするしか無くなるわけですが、他社との間で差別化を図るために「国産」を売りにするガス会社が出てこないとも限らないでしょう。


関東甲信越以外では実現困難か

関東甲信越以外では国産ガスプランは難しい?


 国産ガスを売りにしたプランが出てくるとしても、それは関東甲信越が中心となるでしょう。ガスの産出がこの地域に集中しているというのは前述の通りです。国産という言葉に魅力を感じる消費者が増えているとはいえ、コストなどを考えると他の地域での実現性は低いのではないでしょうか。


制度改正の後押しも


 都市ガスでは、原料価格相場の変動を毎月の料金に変動させる「原料費調整」が取り入れられています。しかし、この制度が対象としている「原料」は、今のところLNGやLPGといった輸入の燃料のみです。国産の天然ガスの価格変動は、月々の料金に反映させることが出来なかったのです。


 これではガス会社が国産天然ガスを使うリスクが高くなってしまい、輸入燃料との間で不公平性が生じてしまいます。そこで、ガス自由化と併せて国産天然ガスにも原料費調整の対象を拡大させることが検討されています。国産天然ガスを、より積極的に使いやすくなりそうです。


ガス自由化の仕組みを考えると・・

色んなガス会社のガスが混ざる

 ガス自由化の仕組みを考えると、厄介な問題もあります。ガス自由化が始まると、様々なガス会社の「ガス」が、同じガス管に相乗りする形で、各家庭に届けられるようになります(参考: ガス自由化の仕組み


 つまり、国産ガスのプランを選んだとしても実際に自宅に届くのは色んな国のガスが混ざったものにならざるをえない、という現実があります。
 「国産ガス」に対してお金を払うわけですから、国産品の振興につながることは間違いありません。しかし、実際に自宅に届くのは必ずしも国産品ではない、というわけです。


 電力自由化の時にも、「再エネのプランを選んでも、自宅に届く電気は再エネじゃない」と騒ぎ立てた輩がいましたが、「国産ガス」も同じ構造の問題を孕んでいるといえます。




今後も継続して情報収集します


 私の個人的関心が強い分野なので、当サイトでも引き続き「国産ガス」については情報発信を続けて参ります。


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