ガス自由化の参入企業が増えない3つの理由

ガス自由化の参入企業が少ない


 ガス自由化に参入を正式に表明して経産省に登録申請を行った企業は、現時点でたった4社。1年早く実施された電力自由化では、同時期には既に56社が登録を終えていたので、ガス自由化に向けた動きは低調と言わざるを得ません。


 ではどうして、出足から躓いてしまったのでしょうか。その理由を「3つ」ご紹介します。





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ガス自由化の参入企業が少ない理由


導管網の整備の遅れ


ガス管が届いていない  ガスを運ぶための「導管」の整備が進んでいません。資源エネルギー庁電力市場整備室長の小川氏の発言(日経新聞 2016年11月15日 朝刊)によれば、国土面積に対する整備率はわずか6%です。


 例えば、現在都市ガスが利用されている地域であっても、徳島市周辺のように外部とのガス導管網の接続が無い地域も多く、そうした場所ではタンクローリーでガスの原料を輸送し、都市ガスの供給を行っています。


 ガスの導管網は、より効率的にガスを広域に届けるのに必要なインフラです。その整備の遅れていることで、広域の多数のユーザーにガスを届けることが出来ないため、参入する企業が増えない要因となっています。


卸市場が開設されていない


卸ガス市場がない  先に実施された電力自由化では、それに先立って「卸電力取引所」が開設され、自社で発電所を持たない新電力を中心に活用が進んでいます。


 一方、都市ガスについては「卸ガス市場」の開設がガス自由化に間に合いませんでした。市場取引が実現すば、新ガス会社は企業同士での直接契約をベースとしつつ、不足分を市場から機動的に調達出来るため、結果として安い料金で消費者にガスを供給できるようになります。しかし、市場取引が実現しないため、従来から豊富なガスの取扱いがあった企業(電力大手、石油元売りなど)以外の参入へのハードルが高くなっています。


安全へのハードルが高い


ガスは点検が大事  ガスは死亡事故にも繋がるような、重大な事故を引き起こすリスクを持っています。したがって、法律によって厳しい安全基準が設けられています。


 皆さんも馴染みがあると思いますが、ガス機器の定期的な点検も法律によって定められていることです。したがって、こうした点検業務を遂行できない企業は、実質的にガス自由化に参入することが出来ません。


 新規参入のガス会社の多くは、従来からガス事業に携わってきた企業と提携することで、こうした保守点検を始めとするハードルを乗り越えています。例えば関電は岩谷産業、九州電力は同じ地盤で真っ向からぶつかることになる西部ガスと手を組んでいます。


 もちろん、こうした安全基準は引き続き維持されるべきです。しかし、これが一つの参入障壁になっているという指摘は、新聞などでも取り上げられている自明の事実です。


電力自由化が失敗した


電力自由化が失敗したからガス自由化も・・  こうした数々のハードルがある中で、ガス自由化に参入しても得られる利益が多くない、と考える企業が多いようです。それはひとえに、先に実施された電力自由化の進捗が芳しくない、ということが理由です。


 電力自由化で電力会社の切り替えを行った世帯は、2016年11月の時点でたった3%程度。90年代に自由化が行われた欧米の国々では、たった数週間のうちに2割近い家庭が切り替えを行った例も珍しくありませんから、この結果は「失敗」と言わざるを得ません。


 電力自由化で参入した企業の中には、例えばソフトバンクのようにガス自由化への参入に前向きな姿勢を見せていた会社も少なくありませんでした。社名は出しませんが、ある石油関連企業がガス自由化への参入を内々に検討しているという話も、2016年4月の時点で私の耳に届いたりもしていました。


 しかし、いずれの企業も未だ参入に向けた動きを全く見せていません。「電気・ガス」のセット契約を見込んでいた企業も多いと聞いているので、電気の契約が取れなかったことで当初のアテが外れてしまったのではないか、と考えています。


これから起こること


 参入企業が少ない中での自由化は、切り替えが進まないという「失敗」に繋がるでしょう。


 既に100社以上が参入している電力自由化ですら、切り替えはたった3%程度です。ガス自由化では、おそらく関東(東京ガス地域)、関西(大阪ガス地域)、名古屋(東邦ガス地域)でしか消費者に選択肢が与えられない(つまり参入企業がない)ことになりそうですし、現時点のペースを考えると三大都市圏ですら新規参入が数社、ということにもなりかねません。これでは切り替えが進むはずがありません。


 一方で自由化の大義名分の下、規制料金(経産省が認可したガス料金)の撤廃の流れもあります。幸い、全国12のガス会社については自由化後も料金の変更には経産省の認可が必要となる「経過措置料金規制」が適用されますが、切り替えの進捗を見て制度の見直しを迫られることになるでしょう。




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