ガス会社を「エコ」で選ぶことは出来るのか?
環境意識の高まりから、「エコ」なガス会社を選びたい人もいるかもしれません。環境負荷に注目してガス自由化の料金プランを選ぶことは出来るのか、最新情報を解説します。
目次
都市ガスにエコプランはあるの?
まずはガス会社のエコプランの現状を解説します。
家庭向け自由化プランは今のところ無い
残念な話ですが、2019年8月時点で「エコ」なガス料金プランはありません。ガス自由化で4大ガス会社(東京、大阪、東邦、西部)のエリアに参入した会社のプランを把握していますが、エコを謳ったものはありません。
現状では一般家庭で「エコなガス会社」を選択することは出来ないと言えます。
CO2排出「実質ゼロ」の業務用プラン
静岡ガスでは2014年に、業務用として「実質CO2排出量ゼロ」のガス料金プランの販売を開始しました。
このプランでは通常通り都市ガスを供給するのと同時に、都市ガスを使うことによって排出されるCO2と同量を「CO2クレジット」という仕組みを使って相殺することで、実質CO2排出量ゼロを実現したものです。
都市ガスのCO2排出量はどれくらい?
ガスの規格によっても異なりますが、東京ガスや東邦ガスなど大手ガス会社の13Aの都市ガスは、燃焼することで1立方メートルあたり2.21KgのCO2を排出します。
一般家庭の一月の都市ガスの使用量は30立方メートル程度なので、毎月66Kg程度の排出量となります。
都市ガスの環境負荷の現状
電気は再生可能エネルギーを利用することでCO2排出量ゼロを実現できます。では、都市ガスはどうなのか。最新の動向をもとに解説します。
原料による環境負荷の違いは?
電気と違って、ガスは原料の差別化が難しい事情があります。家庭や工場などに供給されるガスは燃えやすさなどが規格で定められており、それを守るには同じような原料の配合にならざるを得ません。
そうした中でも、例えば都市ガスの主原料であるメタンガスは海外からLNGという形で輸入するものが多いですが、一部の都市ガス会社は新潟や秋田などで産出される国産ガスを利用しているケースもあります。
国産ガスは産地から消費地までパイプラインで運ばれるケースが多いため、船で運ぶLNG(しかもマイナス162度に冷却する必要がある)よりも輸送時の環境負荷が格段に小さいと言えるでしょう。
しかし現状では、例えば国産ガスを使ったガス料金プランなどを選ぶことは出来ません。こうした選択肢が現れることを期待したいです。
CO2排出量ゼロは実現するのか
都市ガス自体のCO2を低減する取り組みもあります。
国際石油開発帝石(INPEX)は、新潟県長岡市にある国内最大級のガス田にて、天然ガスの生産で発生したCO2と、水素を使って都市ガスの原料であるメタンをつくる装置を稼働させます。再生可能エネルギーを使って水から分解した水素を使えば、「CO2フリー」の都市ガスを生産できると期待される取り組みです。
現状では通常の都市ガス製造と比べてコストが10倍以上となっていますが、2030年には通常と同程度にまでコストを引き下げる方針です。
また、既に実用化されていますが、下水処理場などで発生するガス(バイオガス、消化ガスとも)を都市ガスの原料として使う取り組みもあります。
メタンガスは温室効果ガスの一つとされ、温室効果は二酸化炭素の10倍以上とされています。こうした取り組みによりメタンガスが有効利用されることで、CO2排出量を低減した都市ガスの製造が可能となるでしょう。
排出権を使って「実質ゼロ」は簡単
業務用プランでも実現しているJ-クレジットや排出権などを使った手法でも、実質的な「排出量ゼロ」を実現することが可能です。
こちらは技術的なハードルが無い分、実現しやすいので消費者のニーズが高まればガス会社が動く可能性があるでしょう。実現していないのは消費者のニーズが少ないとガス会社が判断していることが大きな要因として考えられます。