「ガス自由化」最大の問題点とは?
皆さん、ガス自由化に対して「安全性はどうなの?」とか「ガス会社が倒産したら困るのでは?」といったことを心配しておられるのではないでしょうか。でも、いずれの心配も不要でこれまで通りガスを使い続けられる、というのは ガス自由化とは?で説明している通りです。
しかし、今回のガス自由化に問題点が無いわけではありません。多くの人がまだ気づいていない問題があるのです。以下、その問題点について詳しく説明していきます。
「本当に必要な人」に恩恵が少ないガス自由化
今回のガス自由化には様々な恩恵が期待されています。ですが、そうした恩恵は、本当に必要としている人には行き渡らない、もしくは効果が波及するまでに何年もの時間を要するのではないか、と私は見ています。
ガス自由化の一番の目的は、ガス料金を下げることにあります(参考: ガス自由化の目的) この恩恵は、ガス料金が高くて苦しんでいる人たちにこそもたらされるべきものですが、そうはいかないだろう、というのが私の予想です。
では、どんな人たちが「置いてけぼり」にされるというのでしょうか。
ガス管が外部の地域と接続していない地域に住む人々
都市ガスは全国にパイプライン(導管)が敷き詰められ、異なるガス会社同士でも接続されています。しかし、非連結ガス事業者といって、外部とガス管が接続されていないガス会社も全国に42.2%(経産省資料より)あるとされます。
上表は経産省の資料(ガスインフラ整備の現状と課題 ※PDF)から引用したものです。このグラフによれば、外部とガス管が接続していない「非連結」のガス会社の方が、外部との接続がある「連結」のガス会社よりも料金が高いことが分かります。
非連結事業者のお客さんにこそ、自由化の恩恵つまり「ガス料金の値下げ」が必要です。しかし、非連結事業者の営業地域に参入する新ガス会社は皆無である可能性が大きいです。非連結のエリアにガスを持ってくるには、タンクローリーなどで輸送するなど、大きな手間(=コスト)が掛かります。また、それだけのコストをかけても、その地域のお客さんの数が少ないため、商売として成立しにくいという要因があります。
自由化の恩恵を多くの国民が享受できるよう、導管網の整備が急がれます。
地方に住む人々
電力自由化では首都圏と関西圏には多くの新規参入企業が集まりました。実際に切り替えた世帯も、2016年4月16日時点ではこの2地域に94.2%が集中している有様です。地方にお住まいの方からは「選べる会社が全然ない」という声もよく聞かれます。
ガス自由化でも、同じ現象が発生する可能性が大きいです。上で挙げた導管の非連結の問題もありますし、導管が連結されている地域でも「顧客数が少ない」ため、参入しても旨味が少ないという判断が働くからです。
地方の方が大都市よりも世帯人数が多く、月々のガス料金の負担も大きくなりがちです。ガス自由化の成否は、地方への波及が握っていると言っても過言ではありません。
プロパンガスを使っている世帯
今回のガス自由化は「都市ガス」の自由化ですから、1996年に全面自由化されたLPガス(プロパンガス)には直接的な影響はありません。
しかし、LPガスは都市ガスと比べると全国平均で1.86倍という高額な料金水準(ガス事業便覧より)なので、多くの人が不満を抱えています。都市ガス自由化によって都市ガスの価格が更に下落すれば、LPガスとの価格差は拡がる一方です。LPガスの価格にこそ、何らかの措置が必要なのではないでしょうか。
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