台湾有事が日本の都市ガスの与える影響と対策を解説
台湾有事が発生した場合、日本の都市ガスにはどのような影響が生じるのか。後半では家庭でできる対策とあわせて解説します。
目次
台湾有事が発生した場合の日本への影響
まずは台湾有事が発生した際に日本の都市ガスにはどのような影響が生じるのか、解説します。
液化天然ガス(LNG)の輸入に支障が生じる

台湾有事が万が一発生すると、液化天然ガス(LNG)の輸入に一時的な支障が発生する懸念があります。
中国の人民解放軍は日本全体を包囲できるほどの艦船を保有していないため、全面的な輸入の停止に至るリスクは低いものの、日本が輸入する多くのLNGは台湾近海の台湾海峡やバシー海峡を通過して日本に運ばれています。
LNGの主な産地はマレーシア、インドネシア、ブルネイ、カタールなどがありますが、それらの国と日本を結ぶ最も合理的なルートを利用することが難しくなります。遠回りを余儀なくされるため、一時的に国内のLNG在庫が減少したり、輸送コスト(船の燃料代や人件費だけでなく保険料も)が増大することでガスの価格が上昇することになります。
LNGの国内在庫は約2週間分しかない
LNGは気体の天然ガスを-162度以下に冷却して液体化したものです。液体化することで体積を600分の1にすることができるため、運搬コストの削減に貢献しています。
LNGは石油や石炭と異なり、「常温」での保管ができません。常温に戻ったLNGは気体に戻ってしまうからです。長期保存が難しいことが難点とされており、LNGは国内消費量の2週間分程度しか国内在庫がありません。
| 消費量に対する 国内在庫量 | |
|---|---|
| LNG | 約二週間分 |
| 原油 | 約200日分以上 |
| 石炭 | 約1ヶ月分 |
LNGは都市ガスの主原料ですが、日本では発電にも多く使われています。日本の電力の約3割は天然ガスによる発電です。発電用のLNGは消費量の約10日分しか在庫がありません。
台湾有事は当事国である台湾・中国のみならず、日本や韓国、フィリピンといった周辺国、そして製造業のサプライチェーンを通じて世界各国に影響を与えます。その影響はロシアによるウクライナ侵攻を上回るものとなります。従って、万が一発生しても国際社会による迅速な解決が図られる可能性が高いこと、またそもそも中国に戦争を長期間続ける能力が無いことが指摘されていることから、少なくとも船舶の輸送が長期間滞る自体は避けられるでしょう。
しかし、LNGは国内消費量の約2週間分の国内在庫しか無いことから、一時的な在庫の減少が生じるリスクがあります。2021年1月に新型コロナの影響でLNGの輸入に支障が生じ、1ヶ月にわたり「電力不足」が発生しました。この時よりももう一歩、二歩深刻な「LNG不足」が発生するリスクは避けられないでしょう。

都市ガスの供給停止リスクは?
完全に都市ガスの供給が停止してしまうリスクはあるのか、という点ですが可能性としては「高くはない」と言えます。
都市ガス用のLNGは消費量の約2週間分の国内在庫があり、また輸入が「完全に」停止するリスクは低いため主要なエリアで都市ガスの供給が完全に停止するリスクは高くはないと言えます。
台湾から近い沖縄や九州南部、あるいは本州でも中規模な都市ガス会社の供給エリアでは在庫がひっ迫するリスクをある程度は考慮する必要があります。
台湾有事に備えて事前に準備しておくべきもの
台湾有事に備えて、準備しておくべき事柄を紹介します。備えることは抑止力となりますし、また大地震などへの備えにもなります。
事前に用意しておくべきもの
台湾有事だけでなく、大地震などの災害も考えて以下のものを最低限常備しておくことをおすすめします。
- カセットコンロ・ボンベ
- 乾電池
- 懐中電灯
- ドライシャンプー・ウェットティッシュ
- 飲料水
- 非常食
LNGの輸入に支障が出ることで、都市ガスだけでなく電力供給にも影響が出ます。停電への対策も必要です。
万が一、ガスの供給が停止するとお湯を使えなくなるので体を拭くためのウェットティッシュや、水無しで洗髪できるドライシャンプーを用意してください。大地震などの自然災害にも役立ちます。
台湾有事による「ガス不足」は発生したとしても、長期化するリスクは低いです。在庫切れにならないように「節ガス」を短期間実施できる体制を確保してください。
事前に確認しておくべきこと
台湾有事では短期的に、日本全体でガスの節約が必要となる可能性があります。電力の3割は天然ガスで発電しているため節電も必要です。また、大胆な「節ガス」も必要となります。
家庭では給湯に使われるガスが大きな割合を占めています。具体的には入浴です。さすがに入浴を控えるのは難しいので、台湾有事など節ガスが必要なタイミングでは近所の銭湯の利用をおすすめします。
自宅の湯船にお湯を張らないことで節ガスになるほか、銭湯では都市ガス以外の熱源(重油、薪など)を使用しているケースもあるので、シャワーだけで見ても「節ガス」になる可能性があります。お近くの銭湯に目星をつけておくとよいでしょう。
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